日本の菅首相は先日、2050年までにカーボンニュートラルを達成すると発表しました。これは日本の政策、ビジネス、金融機関に大きな変化を促すものです。
日本の発電は、化石燃料に大きく依存しています。化石燃料には石油、石炭、液化天然ガスなどがあり、これらはすべて大量の温室効果ガスを排出し、結果的に地球温暖化の一因となっています。再生可能エネルギーへの依存度を高めるためこれまで多くの努力がなされ、固定価格買取制度の効果もあり、再生可能エネルギー源からの電力創出は、2012年から2017年にかけて平均22%増加しました。2019年の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、19.2%となっています。
政策変更は、企業によってはリスクとして認識されることもありますが、イノベーションを推進する意思のある企業はチャンスと捉えます。今回の変化は、産業革命の頃に始まり、200年以上も親しんできた私たちの行動パターンを変えることです。これまでに例を見ないディストラプティブ(破壊的)とも言える変化なのです。
日本の再生可能エネルギーにおけるブランド
日本市場にはこの大きな変化を、再生可能エネルギーの新製品を投入する事でビジネスチャンスに変えようとする企業が複数存在します。
東京電力は、2019年から2020年の市場シェア29.1%を誇る日本最大の電力供給会社で、「アクアエナジー100」という100%水力発電のブランドを有しています。電気使用時の炭素排出をゼロにしたい消費者を惹きつけるのは、想像に難くありません。
では、その新ブランドはどのように構築されているのでしょうか?
アクアエナジー100は、長い歴史を持つ信頼性の高い東京電力からの「ブランドエンドースメント」の構造を選びました。しかしアクアエナジー100は、インフラプロバイダーとしての東京電力の信頼性を活用したことは賢明ですが、新ブランドの存在はあまり強くないと言えるでしょう。「ハウス・オブ・ブランド」の構造を利用し、より独立した強力なブランドを構築したならば、電力と環境の新しい関係性の構築を強調することができたでしょう。つまり、エネルギー供給者を選ぶ際の行動を変えるよう、消費者をはっとさせるようなインスピレーションをより与えられたのです。
ブランド構築とは別に、アクアエナジー100は、料金表の選択、カスタマーサービスからサプライヤーの切り替えプロセスに至るまで、ブランド体験のあらゆる側面を改善する必要があります。例えば現在、カスタマーサービスと切り替えプロセスは東京電力が担当しています。更に、グリーンエネルギーを支援するために割増の価格を支払う消費者はいますが、まずは東京電力の供給する化石燃料由来のエネルギーとの価格競争力を持つため、グリーン電力の価格を引き下げるための技術革新が必要です。
コミュニケーションに長けているサステナブルなブランドは幾つかあります。その一例が「自然電力」です。東日本大震災後の2011年に設立され、持続可能な未来への道を切り開いていきたいと願っているブランドです。ブランドコミュニケーションを見ると、親しみやすいタイポグラフィに、「自然エネルギー100%の世界は、つくれる」というタグラインが添えられています。自然電気は、料金体系や業者変更のプロセスを明確に伝えるだけでなく、会社の目的、ミッション、サービスをしっかりと伝えています。日本では再生可能エネルギーの供給者はヨーロッパほど一般的ではないので、なぜこの会社を設立したのかというストーリーを伝え、顧客の声も使って、再生可能エネルギーが環境にどのようなメリットをもたらすのかを上手く伝えています。
イギリスの再生可能エネルギーのブランド
再生可能エネルギー利用の好例として、2019年の総発電量の37.1%が再生可能エネルギーであった英国が挙げられます。
エネルギーサプライヤーのBulbは、当時「ビッグシックス」と呼ばれる大手6社が支配していた電力供給市場を大きく変える、という明確な意図を持って2013年に立ち上げられました。
Bulb(バルブ)のブランド戦略とその実行力、特にユーザー体験は優れています。この会社が存在する理由は、「エネルギー分野におけるインスピレーションになる」です。Bulb(電球)は、ピカッと何か新しい発想を与える、というパーパスを反映した会社名であり適当と言えるでしょう。ピンクとネイビーのロゴは「ビッグシックス」のロゴとは違うカラーパレットで一線を画し、手描きのグラフィックで、親しみやすくフレンドリーなブランドの個性を伝えています。彼らのウェブサイトは、シンプルで親しみやすく正直である、という彼らの姿勢を明確に伝えるようにデザインされています。この姿勢は料金体系にも適用され、簡素化してあり、解約金のような隠れたコストは含まれていません。メールには魅力的なアニメーションが使われており、Bulbと顧客とのつながりを増幅しています。
製品(電気)を見ることができず、常にスタッフと交流できるとは限りません。しかしBulbはデジタルチャネルを介して優れた顧客体験を提供することで市場に変革をもたらし、未来の新しい常識を創造する個性的なブランドを構築できることを証明しています。
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